What  dose an Anthropologist do?> Report by UCI Lab.#2

巨大なジグソーパズルを、まずできそうなところから集中的に

​ムリゲ―に挑む人類学者

渡辺 隆史

さて、フィールドワークから時間はしばらく過ぎて、日本へ帰国後の分析プロセス。ここにも私たちの日頃のやり方とは違う、比嘉さんの視点やプロセスがありました!

…とここまで書いてきて、私にはとっても面白いんですが、皆さん大丈夫ですか?興味を持っていただけているでしょうか。面白い!という声を信じてそのまま進めるしかないわけですが。

4泊6日の濃密なジャカルタ滞在を経て、私たちは京都(金沢)と東京でまずはそれぞれの流儀で分析を進めることにしました。そして、2週間後に互いのプロセスと成果物を途中経過として共有することに。

整理するプロセスを通じて「引っかかり」を育む

私たちUCI Lab.は東京でいつもの工程で分析を進めます。

  • 現地でのワークショップで書き出した現場での気づきメモと調査発言録から、ごちゃごちゃに混ざっていた事柄をカードとして分解

  • カードから、ワーク別に食と健康にまつわる同じフレームに沿って
    気づきを再整理

  • 全体を統合して見える気づきや疑問点を抽出

※概念図

※模造紙の写真

これらを、渡辺と大石のチームでコツコツ行っていきます。

この分解して構造にまとめていく工程には、主観的な現場での情報を広く伝わるよう客観的に整理していく役割があります。それと同時に(こちらのほうが重要なのですが)、ワークを通じて参加者の身体の中を情報が通過していくことで、元の客観的フレームを超えた新しい引っかかり、主観的な解釈が再創造されるための「発酵」プロセスの役割もあります。

より良い発酵を行うためにも、この間UCI Lab.では4日間の気づきをできるだけ網羅的に統合しようと意識していました。

現場での望遠レンズから一気にズームイン

一方、比嘉さんの一次分析は、これまた現地と同様私たちとは違うアプローチでした。比嘉さんは多くのデータの中から一部にフォーカスして、そこにあったモノとコトをもう一度徹底的に調べ始めたらしいのです。今回のデータ素材から選んだのは、現地で訪れたJAMU(インドネシアの漢方のようなもの)についてと調査した家庭にあった家庭薬や冷蔵庫の中にあったモノについて。撮影した写真を拡大して偏執的に(と本人が言っていたのでそのまま使用)追いかけます。その結果、現地では分からなかったこと、インタビューでは話していなかったことが見えてくるのです。そしてそれは、局所的でありながら全体にも通じる普遍的な気づきでもあるのでした。

同じ経験を素材にしても、違う切り口からのアプローチ。実は、最後の結論めいたことは結構似てくるのですが、その途中経過の違いと、重なりから漏れる分析の拡がりが「静かな衝撃(面白いっ!)」となってテレビ会議中の私を襲います。

引き算とジグソーパズル

「この違いは何なんだろう?」という謎に激しく心を奪われた私は、1週間モヤモヤしたあげく、ある違いにたどり着きます。

私たちUCI Lab.は、問いに対する結論を出すまでの網羅性を意識して「複雑なものをすっきりさせる」=リフレーミングを目指しています。いわば、フルコースのメニューを一口ずつ味見して全体のテーマや構造を見えやすくするような引き算のアプローチです。そして、このとき重要になるのがそもそもの最初の問いのシャープさです。

一方の比嘉さんは、一番情報が豊かそうな場所に絞りそこだけ徹底的に解像度を上げていきます。後ほどの本人コメントによると「全体の完成図を知らないジグソーパズルを、できそうなところから徹底的に完成させてみる」感じとのこと。つまり、全体像=問い自体が最初は見えていないので、まずできるところから始めてみようということなのです(もちろん、これは今回のようにフィールドワークの始まりの段階についてなので、違う段階ではもちろん異なります)。

疑問が形を変えていく それが分かっていくということ

フィールドワークから分析の長いプロセスを通じて初めて、やっと「問い」そのものが徐々に生成されていく。実はこれは相当に知的体力(忍耐力)が必要な態度です。つまり「答えの分からないさ」を保留するレベルではなく「問いの分からなさ」から保留し続ける強さが必要になるからです。

そして、これこそが「人類学」が他の社会科学とは違うところであり、可能性である理由なのです!! ・・・知らんけど。

分析プロセス編

現地コーディネーターを越えて
-BUSINESS ENGINE ASIAの役割―

BUSINESS ENGINE ASIA PTE. LTD. 代表

小桑 謙一

今回、チームをジャカルタに迎えるにあたって、BUSINESS ENGINE ASIAとしては事前にフィールドワーク・視察の候補地やインタビュー対象者の選定に主に携わった。プロジェクトを通じて、ASEAN各国でそのようなプリインストールの機能を高めるとともに、いつでも情報を得られるネットワークをさらに強化することの必要性を強く感じた。これらはいつでも顧客企業に提供できるものとして、さらに強化していきたい。

今回はUCI Lab.の実験として人類学者の比嘉さんに同行していただいたのだが、我々が経験してきたアプローチとは全く手法が異なるにもかかわらず(フィールドワーク当初、私は異様に細かいことに注目する人だなあ(失礼)と思っていた)、結論として同じ方向性に集約されていくのは個人的に最も面白かった。

比嘉さんの人類学者的アプローチへの学びも、これからの自らの更なる生活者理解の活動に大いに参考になったと思う。

 インドネシアの「食と健康(食および健康)」についての理解は、このチームを再びインドネシアに迎えることでさらに進むと思う。期待していただきたい。

ジャカルタ・Mall Ambassadorのフードコートにて

2018年4月15日

Report by UCI Lab. #2

 

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